シンガポールに住んでいると、マリーナベイの洗練された夜景やチャンギ空港の近未来的な設備ばかりに目が行きがちです。
しかしこの国の本質を知りたいなら、カンポン・グラムを歩いてみることをおすすめしたい。
私が初めてこのエリアを訪れたとき、シンガポールという国の奥行きをはじめて実感した気がした。
高層ビルが立ち並ぶ都心から歩いてすぐの場所に、黄金のドームを持つモスクと、カラフルなショップハウスが並ぶ路地が広がっている。
観光客向けに整備された場所でありながら、地元のムスリムが日常的にお祈りに訪れ、昔ながらの香水店や布地屋が今も営業を続けている。
この新旧・多文化の混在こそが、カンポン・グラムの魅力なのだ。
カンポン・グラムとはどんな場所か
「カンポン・グラム」という名前はマレー語に由来する。
カンポンは「村」、グラムは現地に自生するフトモモ科の樹木「ゲラム」を指す。
かつてこの木はボートの素材や薬、料理の調味料として地元で広く使われており、この地域の植生がそのまま地名になった。
歴史的には、1822年にイギリス植民地政府がマレー系・アラブ系・ブギス系のコミュニティにこのエリアを割り当てたことが、現在の街の原型となっている。
かつてはマレーの王族が居住する地域であり、その象徴が現在のマレー・ヘリテージ・センターの建物です。
1989年には政府によって保護区として認定され、古い建造物は現在も大切に保存されている。
チャイナタウンやリトル・インディアと並ぶシンガポール三大歴史街区のひとつであり、多民族国家シンガポールの歴史を語る上で欠かせないエリアだ。
サルタン・モスク:カンポン・グラムのシンボル
カンポン・グラムを代表する建物が、サルタン・モスクです。
黄金のドームが遠くからでも目を引くこのモスクは、シンガポール最大かつ最も歴史のあるモスクのひとつ。
最初の建物は1824年に建てられ、現在残っている建物はその後改築されたものだが、ヨーロッパとイスラム文化の建築様式が融合した独特のデザインは今も圧倒的な存在感を放っている。
一度に最大5,000人の参拝者を収容できる礼拝堂を持ち、平日・週末を問わず多くのムスリムが訪れる。
観光客も見学できるが、礼拝の時間帯には入場が制限されることがあるため、訪問前に確認しておくとよいです。
モスクの正面にあたるブッソーラ・ストリートは歩行者天国になっており、トルコ料理や中東料理の店、マレーの衣料品店や雑貨店が軒を連ねる。
夕方にテラス席でお茶を飲みながらモスクを眺める時間は、シンガポールの喧騒を忘れさせてくれる。
ハジ・レーン:伝統と現代が交差する路地
サルタン・モスクから徒歩数分の場所にあるハジ・レーンは、カンポン・グラムのもうひとつの顔と言える。
幅の狭い路地の両側に、昔ながらのショップハウスを大胆に塗り替えたカラフルな建物が並び、その壁面にはシンガポール内外のアーティストによるウォールアートが描かれている。
個性的なブティック・ヴィンテージストア・カフェ・バーが密集しており、若者や旅行者が集まるシンガポール随一のおしゃれストリートとして知られる。
昼間は買い物と写真撮影を楽しむ人々で賑わい、夜になると生演奏のあるバーやレストランが活気づく。
在住者の目線で言うと、ハジ・レーンは平日の午前中が穴場です。
週末は観光客で混雑するが、平日の朝は地元のカフェでコーヒーを飲みながらゆっくり過ごせる。
マレー・ヘリテージ・センター:歴史を知るための場所
カンポン・グラムの歴史をより深く知りたいなら、マレー・ヘリテージ・センターへの訪問をおすすめします。
かつてマレーの王族が住んだ宮殿(イスタナ)を修復した建物で、1842年に建てられました。
現在は博物館として一般公開されており、シンガポールのマレー系コミュニティの歴史・文化・伝統について学ぶことができます。
噴水のある美しい前庭と整備された敷地は無料で見学でき、展示館の入場料はシンガポールドルで数ドル程度と手頃。
在住者は永住権の身分証明カードを提示すれば無料で入館できます。
中心地の中に残るアナログな時間
カンポン・グラムの魅力は、シンガポールの近代化の流れの中で「変わらないもの」が残っていることだ。
100年以上続くインド料理の老舗・ザムザムレストランは今も地元住民に親しまれ、オーダーメイドの香水を作れる香水店には昔ながらの製法が受け継がれている。
高層ビルに囲まれた都市部の中心に、こうした時間の流れが違う一角が存在することが、シンガポールという国の懐の深さを示している。
観光地としてだけでなく、在住者が何度訪れても新しい発見があり梶原吉広のお気に入りの場所、それがカンポン・グラムです。


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